金田一耕助アートウエーブ


巡 ・ 金田一耕助の小径 ロケ地巡りツアー  「悪霊島・獄門島」クルーズツアー



・・・・あいつは歩くと蟹のように横に這う・・・・・(息使いしだいに弱まる。雑音)
・・・・あいつは平家蟹だ・・・平家蟹の子孫なんだ・・・・・・(息使いいよいよ弱まり雑音)
・・・・あの島には悪霊がとりついている、悪霊が・・・悪霊が・・・(息使いいよいよますます弱まり雑音、また雑音)
・・・・ぬえのなく夜に気をつけろ・・・(息使いいよいよ耐えがてになり、雑音と人びとのわめきののしる声)
・・・・その島の名は・・・・その島の名は・・・

           
すんません 事務局です」




2010年11月6日秋晴れの岡山県倉敷市倉敷駅に、全国から金田一耕助ファンが集まった。

今年の夏は暑かった、そして急激に寒くなった11月。
紅葉はそんな年が一番美しい、集合場所のロータリーを橋の上から覗くと、ピンクや紫に髪を染めた若者が屯している。
(テレビ版「霧の山荘」紅葉照子の仲間たちだろうか・・・さすが紅葉シーズンと紅葉照子をかけるとは、上手いじゃないか!)

お馴染み岡山の金田一さんにご挨拶し、岡山弁の金田一さんと熱く手を握り合う。
ああ、来て良かった。吸い込まれるようなお二方の笑顔が澄み切った空気と一緒に体中に染みわたる。
座席表を見ながら席に着く、朝が早く昨夜は夜勤だった為か眠い眼をショボつかせる、
(ああ、眠い眠い、どうも新幹線じゃ眠れん性分でね)

「香月さん、受付済ませて下さい、あなた香月さんですか?本人ですか?」

お金も払わずに乗り込んでしまった為、バスを降り受付を済ませる。
-それにしても・・・(本人ですか?とは・・・疑われている・・・・・・・、既に事件は起きているのだろうか)




旅の案内人でもある岡山の金田一さんよりご挨拶があり、今回は行商を兼ねてキング製薬の方が同行される旨を伝えられた。(キング製薬:映画「悪霊島」)
「キングさん酔い止め下さいな」


今年の夏はカリフォルニア産の皮ごと食べられる葡萄をよく見かけた。
おやつ代わりに食べすぎてかなり太ったのを今頃後悔しても始まらない。
窓の外は既に玉島の久保果樹園が広がっている。
琥珀色の葡萄がたわわに実った果樹園も冬支度に入るのだろうか。
サンキストの乾葡萄を噛みしめながら胸の内でつぶやいた
小父さん、この度はどうも・・・・・・」

小父さんに思いを巡らし、しばし車窓を楽しむ。


すんません 事務局です」



夢うつつの私も事務局さんの声で目が覚め、到着したのは笠岡港。
右の写真は映画「悪霊島」で金田一さんが去っていく場面です。
ボストンバックを斜めにぶら下げていらっしゃるところは映画「悪霊島」に合わせているのでしょうか。
実は原作でも金田一耕助の鞄はボストンバック。
スーツケースと同じ位ボストンバックで旅行します。
ボストンバックは「悪魔の手毬唄・迷路荘の惨劇・悪霊島・病院坂の首縊りの家」)


船の中では金田一耕助クイズに挑戦。
問題4金田一耕助が対決した「怪人」ではないのは?
@雨男A狼男B蜥蜴男
これは得意分野である。
「正解した方、ちなみに何の作品かわかる方〜」
岡山の金田一さんに尋ねられ「はい!はい!はい!はいはい、はーーーい!」
「ノンさん」
「悪魔の寵児、吸血蛾です」
A問題5ズバリ、金田一耕助の血液型は?
「はい!はい!はい!はいはい、はーーーい!何の作品かも言えます」
「ノンさんはもういいです」

「キングさん、黙り薬下さいな」


神が宿る島々の中には靄の中にそびえ立つ「蜃気楼島」「悪霊島」「獄門島」があった
イタリアの海の美しさに酔うたことはないが、我々には金田一耕助の面影を慕い胸が切なくなる島々である


備中笠岡から南へ七里、瀬戸内海のほぼなかほど、そこにはちょうど岡山県と広島県と香川県の三つの県を境にあたっているが、そこには周囲二里ばかりの小島があり、その名を獄門島とよぶ。
島に着くと真鍋島のオシャレなカフェテラスにてランチタイム
デッキの横にあるこの大きな木。
郷ひろみさんが植えた銀杏の木がある。
なんら金田一耕助と関わりがないが「瀬戸内少年野球団」で夏目雅子さんも触れたかもしれない銀杏。
大空ゆかり(古谷金田一耕助シリーズ「悪魔の手毬唄」)が触れたかもしれない銀杏とも呼ぼう。

ここでハプニング
参加者の数に比べトイレの数が少ない為、順番を待つ長蛇の列が出来始めている


すんません 事務局です」
「時間がありません、お早く願います」

すんません 事務局です」

「男子トイレも使って下さい」

「キングさん、ハルンケア下さい」

真鍋島のお寺の鬼瓦
これは古谷金田一耕助シリーズ「獄門島」鬼頭家のマークではないか!
漫画のネタにしたものである
「今回のツアーにはマスコミが張り込んでいると思うけえど、きゃつらと紳士協定を結んでこい」
「悪霊島」にはマスコミが大勢詰めかけてきましたが、この真鍋島にも大勢張り込んでいた。
「金田一さんの何処が好きなんですか」
「岡山の地を訪ねて感想は?」
矢継ぎ早に質問を受ける。
しかし、この一言でマスコミは後ずさりした。
「私は金田一さんが生存されていると信じています」
マスコミに煙たがられた後は吊り鐘が置かれた天狗の鼻へ移動。
「分鬼頭の前の坂を登っていくと天狗の鼻といって海に面した平地がある」
駐在所の清水さんが今日も双眼鏡で海賊の見張りをしているのだろうか


真鍋島から児島まで船で渡り、待っていたバスに乗り込む、今度は稲垣金田一さんの「犬神家の一族」のロケ地先に向かう


割と記憶に新しいのは「のんびり横町」で意見交換しながらみんなして観たドラマだからだ。
←この屋根の上に何層もCGで屋根が積み上げられた。
若干暗くなりつつある時刻、庭園のお茶室から順に見学していたその時、


「すんません 事務局です〜」


「時間がないので急いで回って下さーい」


早足で回り過ぎて、膝がガクガクするう
「キングさん、皇潤下さい



くるくると目が回るスピードで見学した部屋の一部ですが
さて、問題です
金田一さんの事件で登場しない部屋はどれでしょうか

漬物部屋

茶室

風呂

洗面所

台所


野崎家の前を一台の車が通過した。
その名もジーンズバス。
運転手はジーンズ姿の中尾金田一耕助風
お客さんも皆、ジーンズ姿でしたよ。
「悪霊島」の三津木五郎もジーンズ姿でしたね、いよいよ次は下津井に向かいます
下津井駅にはアンティークなマークの旧温室の中にレトロな電車が並んでいる。
残念ながら私が行きたかった下津井の町は回らずに鷲羽山の夕陽に間に合うように急がねばならない。
「ノンさん、あれが浅井はるの家よ」
うわ、一瞬を目に焼き付けた




悪霊島の冒頭場面
岡山市の西南方、瀬戸内海のほぼ中央に突出している、小島半島の南端にくらいする
鷲羽山の突端である。


金田一耕助はここで磯川警部と石のベンチに座り、語らうのである。

「島一つ土産に欲しい鷲羽山」
そういう句碑が立っているのを金田一耕助はさっき見ている。(角川文庫P11)

嬉しい!金田一さんが見たものと同じものを見ることが出来る喜び。
金田一さん、私も見てるよ見てますよ。




後ろ髪引かれる想いが伝わったような
水島コンビナートの煙が黒々と夜のしじまに流れていく。
長靴を島に置いてきた金田一さんのように、何か忘れ物をしたような気持ち
私は今戸惑いしている
私はこのロマンチックなツアーおいて、どのような役割を演ずるべきか充分に納得がいっていないのである


「すんません 事務局です」
「美観地区で解散される方は事前にお知らせ下さい」



白壁が美しい倉敷の街並み、金田一耕助も刑部島に渡る前に立ち寄ってぶらりと見物している

「きのうは霖雨が降りつづいていたので、宿でかりた傘をさして歩いたのだが、
今に残る江戸情緒ゆたかな白壁の民家や土蔵のたたずまい、さては垂れる柳の風情は、雨にけむっていっそう金田一耕助の旅愁をさそった。」

その時であった
「香月さん、かつきさんとお呼びするんですね、てっきりこうづきかと思っていました」
事務局さんが私に話しかけて下さる。
「は・・・はい」
「これからも宜しくお願い致します」
お互いに短い挨拶を交わしたのであるが、はて。

おかしい

事務局さん、私は昨年もアイビースクエアーのパーティーでご一緒でしたが。
結構、長々と自己紹介したはずが、、、
その前のミステリーウォークでは先頭を走るあなたについて行ったよ
「早く早く」と川辺宿駅まで走らされ、あ、違う。走らさせて頂き、追っかけたわよね。

印象薄っ、もっと目立たねば!


「キングさん、アリナミン下さいっ!!」




岡山に咲いていた5種類の植物
マリーゴールド、コスモス、ケイトウ、シュウメイギク、ヒャクニチソウ
金田一さんの事件簿に出てくる花はどれでしょうか。



二次会では、原作や映像の濃い話が飛び交った。
私も負けじとのんびり横町で研究した「本陣殺人事件」のネタを振る舞った。
「一柳家に現れた男は右手をポケットに隠し、左手をみんな折り曲げていたのですが、川田屋に現れた三本指の男は右手が三本指でした。
これって先生のサービスヒントでしょうか、「仮面舞踏会」の犯人も、実は冒頭にそれらしいヒントが隠されていますよね」
岡山の金田一さんと埼玉の金田一さんは文庫本を確かめる。
のんびり横町勉強会ありがとう)

「良介さんは蕎麦饅頭を最低2個食べたようですよ」


シーン

(のんびり横町勉強会よ、これはちとマニアック過ぎたぞ)


こうして、丸一日の巡 ・ 金田一耕助の小径 ロケ地巡り 「悪霊島・獄門島」クルーズツアーが終わった訳だが、
鷲羽山に登れたことが何よりも嬉しく「悪霊島」を再読すると新たな発見が多く見つかる

ピンクや紫の髪をした紅葉照子の仲間たちは何処に消えたのか、これもまた瀬戸内海の靄の中に消えた島々と同じ

すんません「事務局」さん、あの人のこと、忘れられない


黄緑色の文字は原作の引用、映像の台詞です
BGMはHarmony- Harmony様よりお借りいたしました

(完)


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