空蝉乙女

目覚めの歌声
	『山のあなたの空遠く 幸い住むと人のいう・・・』 三月十五日 昨年の今月今夜 昏迷のまま歩き続けたこの場所で 荒れた土地にも草木は生える 帰化植物は勢いを増し 焼け跡は花で覆われ 置き忘れた記憶 探しても見つからない 『ああ、われひとととめゆきて 涙さしぐみかえり来ぬ』 土の鼓動が花冷えを溶かし 月夜の晩に軌跡は起こる 『』は上田敏訳　カールブッセ
ノンのコメント 「空蝉処女」の珠生さんが神戸の焼け跡から引き取られた先は横溝正史先生の疎開先の近所と思われます。 それは昭和２０年３月１５日。翌年の秋「獄門島」の帰りがけ疎開宅を訪ねた金田一さん、珠生さんと会えたのかな？

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